「退職したら任意継続しないとダメ?」


―制度の正しい理解とメリット・デメリット―


今回は、実際にあった扶養に関する相談です。

退職後の健康保険の選択肢としてよく話題になる「任意継続」についてご紹介します。


💡 任意継続とは?

退職後も、在職中に加入していた健康保険(協会けんぽや健康保険組合)を最長2年間継続できる制度です。
ただし、加入には以下の条件があります:

  • 資格喪失日の前日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失日から20日以内に申請すること
  • 初回保険料を期日までに納付すること

✅ 任意継続のメリット

メリット内容
① 給付内容が変わらない在職中と同じ健康保険給付が受けられる(※傷病手当金・出産手当金は除く)
② 扶養家族をそのまま継続できる配偶者や子どもなど、扶養認定された家族もそのまま保険対象に
③ 保険料が安くなる場合がある協会けんぽでは標準報酬月額の上限(30万円)で計算されるため、退職前の収入が高かった人は保険料が抑えられることも

⚠️ 任意継続のデメリット

デメリット内容
① 保険料は全額自己負担在職中は会社と折半だった保険料が、退職後は全額自己負担
② 保険料は2年間固定所得が減っても保険料は変わらない。国民健康保険のような減免制度はなし
③ 2年で終了最長2年間で自動的に資格喪失。その後は別の制度への切り替えが必要

📝 よくある誤解:「任意継続しないといけない?」

退職時に、

「あなたは収入が多いから家族の扶養には入れないので任意継続か国保に入らなくてはいけませんよ。」

「任意継続しないと今受け取っている傷病手当金がもらえなくなります。」

と言われること等、これはよくある誤解です。

※但し退職日に出勤しているとダメ!等、要件が複数あるので傷病手当金の継続給付については次回以降のテーマで書きたいと思います。

扶養については過去記事のコチラへ→社会保険の「扶養」ってどういう事?

選択肢一覧:

  1. 任意継続
  2. 国民健康保険に加入(市区町村で手続き)
  3. 家族の社会保険の扶養に入る(収入要件あり)
  4. 転職先の健康保険に加入(再就職の場合)

✨ 社労士としてのひとこと

任意継続は、扶養家族がいる方や、退職前の収入が高かった方にとっては有利な選択肢になることもあります。
一方で、収入が大きく減る見込みがある方や、扶養に入れる環境がある方は、国民健康保険や扶養の方が負担が軽くなる場合も。

「退職したら任意継続しかない」と思い込まず、それぞれの制度の特徴を理解したうえで選択することが大切です。


次回は「扶養に入るための収入要件」について書いてみようと思います。
ご縁ある皆さまの実務に、少しでもお役に立てれば幸いです。


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