社会保険の「扶養」とは?


よくある労務相談から見えてくるポイント


今回は、労務相談で頻出のテーマ「社会保険の扶養」について、基本的な考え方と実務上の注意点をまとめてみました。

まず抑えていただきたい点は、税法上の扶養とは異なるということです。


💡 社会保険の扶養とは?

社会保険における「扶養」とは、健康保険・厚生年金保険の被保険者が、一定の条件を満たす家族を「被扶養者」として登録することで、その家族も保険給付を受けられる制度です。
被扶養者は保険料の負担がなく、医療や年金の給付を受けられるため、制度上のメリットは大きいです。


✅ 扶養に入れる条件は?

社会保険上の扶養に入るためには、大きく分けて以下の2つの条件を満たす必要があります。

① 続柄の条件

被保険者と以下のような関係にある方が対象です:

  • 配偶者(事実婚含む)
  • 子・孫
  • 父母・祖父母
  • 兄弟姉妹
  • その他3親等以内の親族(ただし同居が必要)

※75歳以上の方は「後期高齢者医療制度」の対象となるため、扶養には入れません。

② 収入の条件

原則として、以下の収入要件を満たす必要があります:

状況年間収入の基準備考
同居130万円未満かつ被保険者の収入の半分未満60歳以上または障害者の場合は180万円未満
別居130万円未満かつ仕送り額より少ない仕送りの証明が必要(通帳・振込記録など)※学生は省略可

※「年間収入」は、認定日以降の見込み額で判断されます。月額換算では約108,333円が目安です。


📌 よくある質問

Q. 夫が失業した場合、妻の扶養に入れる?
→ 可能です。ただし、失業手当を受給している間は、日額3,612円以上であれば扶養に入れません。

Q. 共働きの場合、子どもはどちらの扶養に?
→ 原則として、収入が高い方の扶養に入ります。ただし、将来的な収入見込みや家庭の事情によって柔軟に判断されることもあります。

Q. 海外に住んでいる家族は扶養にできる?
→ 原則不可。ただし、留学中の子どもや海外赴任に同行している家族など、例外的に認められるケースもあります。


📝 実務上の注意点

  • 扶養に入れる際は「被扶養者(異動)届」と添付書類の提出が必要です
  • 事実発生から5日以内に手続きを行うのが原則
  • 認定には年金事務所の審査があるため、状況によって追加書類を求められることもあります

✨ 社労士としてのひとこと

「扶養に入れるかどうか」は、収入の見込みや生活実態など、細かな判断が必要なテーマです。
誤解や思い込みで手続きが遅れると、給付が受けられないなどの不利益につながることもあります。

現場での相談対応では、制度の違いや判断基準を丁寧に説明することが、信頼につながると感じています。


次回は「自営業の妻は扶養に入れられるの?」について書いてみようと思います。
ご縁ある皆さまの実務に、少しでもお役に立てれば幸いです。


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