「就職祝い金・支度金」の取り扱い
―社労士が解説する制度設計と実務の注意点―
今回は、採用時に支給される「就職祝い金」や「支度金」について、法的な位置づけや実務上の注意点を整理してみます。
🎁 就職祝い金・支度金とは?
- 就職祝い金:企業が採用決定者に対して支給する金銭的インセンティブ。
- 支度金:入社に伴う引越しや準備費用として支給される金銭。
いずれも、採用競争が激化する中で「応募促進」「定着支援」を目的に導入されるケースがあります。
⚖️ 法的な注意点:職業安定法との関係
- 職業紹介事業者が求職者に金銭を支給することは原則禁止(職業安定法第32条)※令和7年4月1日より一部改正
- ただし、雇用主が直接支給する場合は合法とされています。
💰 税務処理の注意点
- 労働の対償と見なされる場合は社会保険の対象
→ 労務の対価とみなされるため、給与所得とする必要がなります。 - 社宅への転居費用などの場合は非課税となる可能性あり
→ 支度金と転居費用は明確に区分することが重要
📝 制度設計のポイント
- 支給条件を明確にする(例:3ヶ月勤務後に支給)
→3か月在籍することを条件にすると労働の対償であるとみなされる可能性が高いです。 - 就業規則や労働条件通知書に記載する
- 返還規定を設ける場合は合理性と明文化が必要( 例:6ヶ月以内に退職した場合は全額返還)
→強制労働の禁止に違反する可能性があります。
✨ 社労士としてのひとこと
就職祝い金や支度金は、企業と採用される側にとって魅力的な採用施策に見えますが、法令・税務・制度設計の3点セットを押さえることが不可欠です。
社労士としては、就職祝い金や支度金を慶弔見舞金と同様に福利厚生費扱いとするためには、返還規定を設けない方がリスクが少ないのではと思います。
返還規定を設けると(○日以内に退職で返還等)、労働者を拘束してしまうことになり、結局労働の対償ではないかという疑義が生じます。
すぐ辞めてしまう人には支給したくない場合には試用期間終了後3か月等に賞与として支給する方が社会保険的にも税務的にも疑義がでないのではないかと思います。
制度設計をする時には、分かりやすさと納得感を大切にしたいですね!
ご縁ある皆さまの実務に、少しでもお役に立てれば幸いです。
