傷病手当金は退職後も受け取れる?
―「継続給付」の条件と注意点を解説―
今回は「退職後の傷病手当金」について、制度の仕組みと継続給付の条件をわかりやすくご紹介します。
💡 傷病手当金とは?
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで働けなくなり、給与の支払いがない場合に支給される所得補償制度です。
支給額は、標準報酬日額の3分の2相当で、最長通算1年6ヶ月まで受給可能です。(※同一の傷病)
✅ 退職後も受給できる「継続給付」とは?
退職すると健康保険の資格を喪失しますが、以下の条件をすべて満たせば、退職後も傷病手当金を受け取ることができます。これを「継続給付」と呼びます。
継続給付の4つの条件:
- 退職日までに継続して1年以上被保険者であったこと
- 退職日に傷病手当金の支給を受けている、または受給できる状態であること
- 退職日に労務不能であること(出勤していないこと)
- 退職後に再就職していないこと(就労開始で原則支給停止)
※退職後に新たな病気やケガをした場合、その傷病が原因で労務不能となっても支給対象外です。
📝 よくある誤解
- 「退職したら傷病手当金はもらえない」→ 誤りです。条件を満たせば継続可能です。
- 「任意継続に加入しないと受け取れない」→ 誤りです。任意継続加入の有無は関係ありません。
- 「退職日に有給休暇を使えばOK」→ OKですが本当に出勤していませんか?引継ぎ等で実際には出勤していると労務不能と認められません。※有給休暇扱いであれば給与が発生しますので、傷病手当金の支給対象日となりません。
✨ 社労士としてのひとこと
退職前に傷病手当金を受給している方は、退職日は出勤しない事、手続きのタイミングが非常に重要です。
社労士としては、退職前の制度説明や申請支援を通じて、安心して療養に専念できる環境づくりをサポートしたいと考えています。
また、定年間際の方、会社を退職し独立してフリーランスや個人事業主となろうと考えている方は、退職前にがん検診や健康診断を受けることを強くおすすめいたします。
退職後に重大な病気が見つかっても傷病手当金の支給対象にならない上に、初診日要件があるので障害厚生年金の対象にもなりませんので…
ご縁ある皆さまの実務に、少しでもお役に立てれば幸いです。

